蛍光分子を連結する部位としてまた金属イオンとの錯生成部位としてエチレンジアミン、プロピレンジアミンなどの各種脂肪族系ジアミンや芳香族系ジアミンを選び、20種の重金属イオンに選択的な蛍光試薬の合成を試みた。蛍光部位としてはナフタレン、アントラセン、ピレンなどの蛍光性の芳香族化合物を選んだ。単結晶化が成功したものもある。まず連結鎖に芳香族ジアミンを用いた場合は溶液中で大半のものがエキシマー発光のみを示した。一方、脂肪族ジアミンを用いた場合、用いる溶媒によりモノマー発光のみを示すものが見いだされた。一般に脂肪族ジアミン系の場合はアセトニトリル中ではモノマー蛍光を与えたが、Cu^<2+>イオンなどの重金属イオンと錯生成すると、長波長領域に新たなエキシマーバンドが現れた。これは錯生成により、2つの芳香環部位が近づいて相互作用した結果と思われる。Cu^<2+>、Ni^<2+>、Co^<2+>のスペクトルにおいては時間依存性が見られたが、Zn^<2+>の発光は安定していた。安定度定数の算出や連結鎖の長さと発光特性との関連は今後の検討課題となった。 次に、遅い発光過渡現象を解明するために、蛍光オプティカルファイバー型ストップドフロー装置の試作を行った。ストップドフロー部分は既設のものを用い、励起光源と分光部分を試作した。Xe光源として高輝度平行光束光源装置、分光器として島津モノクロメータSPG100を使用した。動的な解析の段階までは至らなかったが、今後、本装置を用いることによって、錯生成の様子を動的に追跡することが可能になると思われる。またNMRや結晶構造解析などによってさらに検討していく予定である。
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