研究概要 |
イオン交換クロマトグラフィーにおける固定相及び移動相のパラメーターの他に,第三の分離パラメーターとして,イオン交換カラムの垂直方向に静磁場を設置すれば,磁気作用によりイオン交換平衡に新たな差が生じると予測した。その結果,従来のクロマトグラフィーによる金属イオンの分離挙動とは明らかに異なるクロマトグラムを示し,これまで分離が困難であったイオンの相互分離が効率よく行える新規なイオン交換クロマトグラフィーが開発できるものと研究を進めたところ,以下の成果が得られた。 (1)磁極ヘッドが平坦な現有の電磁石と,磁極ヘッドの形を波状に新たに加工した電磁石を用いて,磁場の強弱をカラムに繰り返し負荷し,磁場効果を最大限に発現させる条件を調べた結果,20A,18〜22Vで8〜11KGの磁場をカラムに負荷した時に,クロマトグラムに大きな差が現れた。 (2)本研究で購入したデュアルポンプ(東ソ製CCPS)による,フローインジェクショシステムを組立てた結果,試料溶液の注入,溶離液の流速が極めて安定となり,再現性はRSD1%以下と十分であった。 (3)Fe(III)をクロロ錯陰イオンとして,陰イオン交換樹脂(Dowex 1×8)カラムへの負荷流速は1.0ml/分が最適であった。溶離流速を0.5,0.2,0.1ml/分について測定したところ,0.2ml/分以下の流速でクロマトグラムは後方にシフトし,0.1ml/分では極大ピーク-に2.5分間の差が現れた(磁場をかけない場合に比べて)。 (4)Co(II)をクロロ錯陰イオンの場合,負荷流速を0.2ml/分,溶離速度0.2ml/分とすると,極大ピーク-が30秒間後方にシフトし(磁場をかけない場合に比べて),再現性のよいクロマトグラムが得られた。 外部磁場によりクロマトグラムが移動したという実験結果は,前例のない画期的な研究であり,更にイオン交換樹脂やカラムの長さなどを変えて,多くの金属イオンについて磁場効果を詳細に調べて,静磁場イオン交換クロマトグラフィーの基礎を確立するために,現在も実験を継続している。
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