本研究は、分子レベルでの擬態が寄生性の生物と宿主の間でどの程度普遍的にみられる現象であるのかを検証することを主目的とした。この目的のために、まずデータベースからさまざまな生物種の全ゲノム配列データを入手し、それをアミノ酸配列に翻訳することによって、さまざまな生物における全蛋白質配列(プロテオーム)データを用意した。平成9年2月までに、インフルエンザ菌、マイコプラズマ2種、大腸菌、らん藻、パン酵母、古細菌、各種ファージ、各種ウイルスなどのプロテオームデータを入手した。これらのプロテオームの共通性を調べるために、Hash Tableを利用して長さが2-20アミノ酸のペプチドを高速に検索できる専用プログラムを開発した。電子計算機を利用して、各生物種のプロテオームデータに対してこのプログラムを実行した。現在は、最終的な分子擬態の検出のための統計的方法論の開発を行っており、その開発に成功すれば、本研究の当初の目的であった分子擬態の検出に成功するものと予想している。今後、この研究成果を、学術論文などで発表する予定である。 また、この研究の副産物として、ヒトのゲノム中には数多くの大規模な重複領域が存在するというきわめて興味深い発見をすることができた。97年2月現在、合計128カ所の重複領域を発見しており、これはヒトの遠い過去におけるゲノムの倍数化の結果であろうと考えられた。この研究成果は国際学会で発表するとともに、「ヒトゲノム重複領域データベース」としてWWW(URL : http/www.cib.nig.ac.jp/dda/timanish/dup.html)で公開している。
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