本研究の目的は、巻型鏡像異性の進化プロセスに関する帰無仮説を検証するために、巻型が遺伝的に逆旋した場合、巻き方向以外の形態発生は影響されず厳密に鏡像対称の形態が形成されるか否か、及び適応度を決定する生態的形質が同等であるか否かを検定することにある。 巻貝の巻型変異には、左右巻型が多型的に共存する場合と単型的な種に逆旋個体が稀に生じる場合がある。これら多型種群と単型種群では、体型及び交接行動が著しく異なり、鏡像異性の適応的意義を同等に論じることはできない。本研究の特色は、今日まで実験的解析が不可能であった単型種群を対象とし、巻型が遺伝的に分離する系統の左右巻型を比較する点にある。 左右巻型の成長・生存・産卵率を比較した。用いた系統、左右巻型のきょうだいの両親、そして左右巻型の3種類の要因について、分散分析を行った。その結果、両親が由来する系統およびきょうだいの両親の双方が生存・成長のいずれにも統計的に有意な効果をもたらしていることが判明した。しかし、左右巻型の間では、成長・生存・産卵率はいずれも有意に異ならないことが判明した。
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