本研究者はこの2年間、遺伝学を行うには狭い大学の研究空間においてミヤコグサLotus Japonicusの分子遺伝学的解析が可能であるか否かを問うてきた。これはとても重要なテーマであった。ミヤコグサの分子遺伝学的解析が可能になるということは、同時に、形態の多様性を誇り、かつ資源的にも生理学の研究材料としても有用なマメ科植物の原因遺伝子群の単離へ向けての足がかりを作ることを意味する。日本全土から15のエコタイプを採集し、その生育特性を調べたり、あるいは約4万のミヤコグサをEMSで処理したM2種子から小型で叢生しない系統、早咲きの系統等を集めたが、残念ながら、実験室内での解析に耐えうるものは見つからなかった。これらの基礎的研究は今後も行っていく予定である。一方、ミヤコグサのゲノム解析はほとんどないに等しい状態にある。日本のエコタイプのGifuが世界に広まっているが。その交配パートナーも決まっていない。そこでGifuと交配可能でかつAFLP解析により多くの多型をしめすエコタイプを解析した。しかしながら、日本のエコタイプはどれも5%以内の多型しか認められず、今後の解析に疑問を残した。カナダのGrant博士は日本のミヤコグサと種の異なるLotus filicaulisとが交配可能であることを報告している。AFLPにより多型解析を行ったところ50%以上の多型が検出された。現在得られた根粒形成ミュータントの形質がL.filicaulisと掛け合わせたF2においてきちんと分離するか否かを検討している。
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