研究概要 |
覚醒水準を変動させる外部環境要因として光刺激を用い,覚醒水準とCNV振幅の間の逆U字仮説について検証した.被験者は21〜25歳までの健康な男子大学生及び大学院生7名を用いた.眼前に呈示される光刺激の明るさは輝度で10cd/m^2,100cd/m^2,320cd/m^2,1000cd/m^2,1800cd/m^2の5条件とし,各輝度条件のもとでCNVを測定した.CNVパラダイムには,予告刺激(S1)と命令刺激(S2)からなる単純反応時間課題を用い,両刺激には同じクリック音を用いた.また,刺激間間隔は3秒,試行間間隔は11〜13秒に設定し,一回の測定は30試行とした.覚醒水準の指標には,S1前2.56秒の自発脳波に対し周波数分析を施し,α波(8〜13Hz)からβ波(13〜20Hz)までの帯域パワー値に対するα波帯域の相対パワー値(α波率)を用いた.CNVと自発脳波である脳電図は国際10/20法に従いF_Z,C_Z,P_Zの3部位から導出した. 覚醒水準の指標であるS1前のα波率について,輝度の対数値とF_Zのα波率の間には有意な負の相関(r=-0.38 N35,p<0.05)がみられ輝度の上昇に対して覚醒水準が有意に上昇していた。CNVに関してはF_Zの早期CNVについてのみ,その振幅に輝度要因の有意な主効果がみられた(F=3.80;df=4,24;p<0.05).F_Zの早期CNV振幅は320cd/m^2において低輝度条件の10cd/m^2と高輝度条件の1000cd/m^2l比べて有意に高い振幅を示した.これら結果から,輝度の上昇による覚醒水準の上昇に対して,CNV振幅は逆U字型の反応特性を示すことが確認できた.
|