レーザー・ドップラー法による皮膚血流量測定では、プローブのわずかなずれにより測定値は大きく変動する。これは皮下1mm^3程度を測定対象とするためであるが、血流分布を詳細に観察し得ることにもなる。そこで、これの高い部位(H点)と低い部位(L点)に着目し検討を行った。 実験1では成人女子5名を被験者とし、寒冷血管反応について捉えた。対象部位は左手第3指先端部であり、先ず、平成8年度において確立されたH点及びL点の分布確認法に基づき両者を同定した。そして0°Cの冷水中に30分間浸し、皮膚血流量、皮膚温、及び主観(疼痛感)について連続的に観察した。その結果これら各指標は特定の傾向をもって推移した。すなわち、初期ハンティングリアクションにおいて、先ずH点の皮膚血流量が増し、その約1分後にL点における増加が観察され、さらに約1分後に皮膚温が上昇に転じた。なお疼痛感の消失はH点での上昇によく一致した。本研究により寒冷血管反応の実態が明らかとなった。 実験2では成人女子3名を被験者とし、被服圧との関係について捉えた。対象部位は左手第3指先端部及び左足第3趾先端部とし、手ではH点及びL点を、足ではL点のみを求めた。水銀式血圧計の表示装置部と自作のゴム製チューブを連結し、圧をゼロ水準から最大60mmHgまで変化させた。その結果、椅座位にて上肢を体側に垂らした状態ではH点・L点の血流量は被服圧水準と対応を示さず、加圧部位、加圧面積及び姿勢について考慮する必要のあることが示唆された。
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