工学ギャップ(EgeV>2.0eV)の欠陥の少ないアモルファス・シリコン(a-Si:H)薄膜を作製できる「化学アニーリング法」を開発し、ワイドギャップa-Si:H膜を用いて、アバランシェ増倍効果を実現するための検討を行った。この新規な製膜技術では、Eg>1.9eVのワイドギャップa-Si:H膜で、欠陥濃度(Ns<1016cm-3)の高品質膜が容易に得られる。さらに、p-i-n構造デバイスを試作し、一次光電流測定の結果、電子、正孔いづれのキャリアについても、mt>10-8cm2/Vの高い値をしめし、光伝導度の温度依存性から、伝導帯近傍のトラップ準位もこれまでの高品質a-Si:Hのそれと同程度であることを確認した。そこで、高電界においても電極からの注入を阻止できるブロッキング電極を形成するため、透明電極上にPH3/SiH4混合比と膜厚をパラメータとし、N-type a-Si:H薄膜を堆積し、その上にワイドギャップa-Si:H膜(1mm厚)を堆積し、上部電極としてPt半透明電極を設けたSchottkyダイオードを作製した。その結果、PH3=250vppm、膜厚100-200nmのN-type a-Si:H膜をブロッキング膜とした場合、5x105V/cmの逆電界印加にも耐えるデバイスが形成された。このデバイスの光電流ゲイン(G)はE>1.5x105V/cmからG=1を越え、5x105V/cmでは、G=10に達し、ホットエレクトロンによる光電流の増倍効果が観測された。しかし、ここで試作したSchottky型デバイスでは、E>1x105V/cmの高電界印加条件で、暗時におけるリ-ク電流が飽和することなく、印加電界の増加と共に、指数関数的に増加する領域が存在する。このリ-ク電流の原因は電極との接合からのキャリア注入が原因と思われ、その低減のための検討を進めている。さらに、この増倍効果がアバランシェ増倍効果であるか否かを確認するために、撮像デバイスを試作し、電子ビーム操作による光電流測定による評価の準備を進めている。
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