本研究の目的は、2次元無限双極子シートが持っている次元性および超薄膜であるがゆえに示す特徴的な光学的性質を、モデルおよび実験を通して系統的に調べることである。まず、二次元無限双極子シートを点双極子の集まりとしてモデル化し、この厚さの無いシートの入射光に対する応答(反射、透過スペクトル)を計算した。さらに、このようなシートを、等価な連続体に置き換える方法を開発し、連続体近似の範囲で、透過吸収、反射、および共鳴レーリー散乱スペクトルがどのように見えるかを、個々の点双極子が持つさまざまな均一幅および不均一幅を仮定して計算し、これらが上記の単純なモデルと一致することをまず確かめた。その結果、不均一幅が均一幅と比較出来る程度に狭い場合以外は、線形光学測定から均一幅・不均一幅に関する情報を実験的に抽出することができないことが分かった。以上のモデル計算を検証するために、色素を含む超薄膜(LB膜)を作製し、その透過吸収、反射、共鳴レーリー散乱分光を行った。これらの実験は、理論との比較を容易にするために基板Brewster角で行った。均一幅が十分に狭いという仮定で、透過吸収スペクトルから二次元双極子シートモデルに従って反射スペクトルを計算したところ、実測と良い一致を得、上記の単純なモデルで光学的性質が説明できることを示した。
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