研究概要 |
原子サイズの空間分解能で表面電子のエネルギー状態いわゆる局所状態密度(Local Density of States;LDOS)が測定できるSTM/STS装置を完成した。また、表面反応素過程が電子状態の変化に基づきシミュレーションできる第一原理分子動力学の計算プログラムを完成した。そして、種々の反応種を生成するための高周波プラズマによるラジカル発生装置を試作し、その性能を評価した。その結果に基づき、STMの超高真空チャンバに設置できる高周波プラズマ装置を設計した。以下に本年度の研究の進展および新たに得られた知見について述べる。 (1)金属が吸着したSi(001)2×1表面や原子状水素が吸着したSi(111)7×7表面のSTM/STS計測の結果から、固体表面反応素過程を観察する場合は、探針の材質および先端の原子構造が重要であることが明らかになった。また、探針と試料間の距離は、一定に保たれているとしても、STS計測結果に影響を及ぼすため、STM/STS計測法をさらに改良する必要がある。 (2)以下のような成膜・エッチングプロセスにおける固体表面反応素過程の計算機による第一原理分子動力学シミュレーションを始めた。 a)Siの溶液中の化学エッチングにおけるOH基によるSi表面の除去過程 b)スパッタリング成膜におけるZrN,AlN窒化物薄膜の成長過程 ZrおよびAl表面上でのN_2の解離吸着反応の素過程をシミュレーションしている。 c)反応性イオンエッチングにおけるF,Cl原子によるSi表面の除去過程 Si表面にF,Cl原子が吸着した場合の表面のLDOSを計算し、Siの第1層のバックボンドが切れる機構を示す予定である。
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