前年度に引き続き行った微小隙間の速度計測技術の改良に加えて、本年度はDSMC(Direct Simulation Monte Carlo)法による極微小隙間速度場の数値シミュレーションを行い、微小隙間の流れ場の物理現象について多角的に検討を加えた。 まず、熱線流速計による速度場計測法に関する検討では、常圧環境下において積層された回転円盤の流れの計測を通じて、流れを乱さず、なおかつ剛性の高い小型プローブの設計・製作を主として行った。その際、プロング先端にセンサを精密に接着する手法に関して、特殊はんだによる溶着や接着剤による接着など複数の方法を試した結果、いずれも大差がなかった。 また、前年度計画した減圧タンクにおける速度場計測に関しては、プローブの製作などに予想以上の時間を費やしたために計画期間内に実行に移すことができなかったが、今後継続して研究を行う予定である。 実験と並んで、本年度新たに行った数値シミュレーションでは、工学的に重要な狭い隙間流れの典型として、コンピュータハードディスクのヘッドとディスク間の流れを模擬した幅1.5μm、長さ5.6mmの領域をとりあげ、約0.001気圧の環境下での速度場および圧力場などの解析を行った。その結果、従来、ナビア・ストークス方程式にすべり境界条件を与えて行った計算結果などと比較して良好な一致を得ることができたので、今後、実験結果の比較検討を行う材料として有効であることが確認できた。
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