研究概要 |
本研究では,インクリボンの染料層に照射されたレーザー光エネルギーを熱エネルギーに変換し,染料層に隣合って置かれた用紙の高分子層(受像層)へと染料を移動させることにより,従来にない高速・高画質フルカラープリンターの基礎原理確立の可能性を秘め,また基礎的観点からは,自由界面ではなく従来あまり取り扱われていない固相間界面における局所熱駆動物質移動現象を明らかにすることを目的とする. 実験ではインクシート(染料層)と受像紙(受像層)を密着した状態で半導体レーザーをインクシート背面から照射し,照射条件(照射出力,照射時間)や記録材料の種類(染料層および受像層の融点,ガラス転移温度等の物性値)を変えて,統計的な実験を行い,赤外線温度計による照射面温度の時間変化計測および転写染料を溶出させた溶液の分光光度計による濃度計測から染料転写量計測を行った. また数値解析では熱伝導・物質拡散場を接触熱抵抗・接触拡散抵抗を考慮して2次元円筒座標系コントロールボリューム法にて解析し,いくつかの代表的条件の場合についての実験結果(温度変化,染料転写量)と照合し計算モデルの妥当性を検討・確認した後に,より高速・高解像度レーザサーマルプリンタの可能性を探るために様々な条件を変えての計算を行った.特に光熱変換位置を変化させた数値解析により染料層自体に光吸収(光熱変換)を行わせることが高速性,高解像度の点で有利であることが確認され,本システム構成がより高速・高解像度プリンタの実現の可能性を持っていることが示された.
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