室温エキシトンによる青色微小光共振器の研究

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08875061
• 研究機関: 北海道大学
• 研究代表者: 末宗 幾夫 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (00112178)
• 研究分担者: 植杉 克弘 北海道大学, 電子科学研究所, 助手 (70261352)
• キーワード: II-VI族半導体 / 励起子 / ZnSe / MgS / 歪み超格子 / MOCVD / 閃亜鉛鉱構造 / X線回折

研究概要

これまでエキシトン発光に関する研究は、低温に限られていた。そのためエキシトン発光を用いる微小光共振器の研究も、低温での研究に限定されていた。当該研究は、エキシトン発光線幅を決めるエキシトン散乱を、超格子の量子閉じ込め効果で低減し、自然放出光の制御、フォトンと電子系のコヒーレント相互作用の研究を室温で実現しようとするものである。
当該研究に関連して、特にバンドオフセットが大きく強い量子閉じ込めが可能なZnSe/MgS超格子を提案し、最近当該研究者らは、閃亜鉛鉱構造のZnSe/MgS超格子の成長に世界で初めて成功した。これに続いてZnSe/MgS超格子内のヘテロ界面急峻性の改善に取り組み、ヘテロ界面での成長中断などにより発光線幅の狭幅化が見られ、井戸幅の一分子層の違いによる発光ピークが明瞭に分離して観測されるレベルに達した。
この超格子におけるエキシトン吸収は室温まで明瞭に観測される。室温でのその線幅を主に決めるLOフォノン散乱について検討し、ZnSe/MgS超格子における量子閉じ込め効果によりフォノン散乱がバルクに較べ約半分程度に低減されることを確認した。またこの超格子からの発光自体も室温までエキシトンからの寄与によることを明らかにしている。
このようなエキシトン発光の検討と並んで光微小光共振器を形成するための分布光反射器の制作を進めた。まず理論的にワイドギャップ半導体層の屈折率をモテル化する上でMSEOモテルが適当との結果を得、これに基づいてZnSe/ZnSによる分布光反射器を作製し、10周期で理論値に近い95%程度の反射率が得られることを確認した。またこれまで主に使われてきた(001)結晶面より遷移確率が大きい(111)面に近い(311)面上でも同程度の反射率を持つ分布反射器が作製できることを確認した。

研究成果

• [文献書誌] K. Uesugi: "“Epitaxial Growth of Znicblende ZnSe/MgS Superlattices on (001)GaAs"" Appl. Phys. Lett.Vol.68 No.6. 844-846 (1996)
• [文献書誌] R. Cingolani: ""Lasing in ZnSe/ZnS_<0.18>Se_<0.82>Superlattices"" Phys. Rev. B.Vol.54 No.24. 17812-17818 (1996)
• [文献書誌] M. Dabbicco: ""Time-resolved Study of Stimulated Emission in ZnSe/ZnSSe Superlattices"" J. Cryst. Growth.Vol.159. 657-660 (1996)
• [文献書誌] I. Suemune: ""Growth of Zincblende MgS/ZnSe Superlattices and Their Hetero Interface Properties"" J. Cryst. Growth. Vol.170. 480-484 (1997)
• [文献書誌] H. Kumano: ""Excitonic Properties of Zincblende ZnSe/MgS Superlattices by Reflectance Spectroscopy"" Phys. Rev. B.(印刷中). (1997)
• [文献書誌] H. Nashiki: ""Luminescence of Excitons Localized by Monolayer lnterface Fluctuations in ZnSe/MgS Superlattices Grown by Metalorganic. Vapor Phase Epitaxy"" Jpn. J. Appl. Phys.(印刷中). (1997)
• [文献書誌] I. Suemene(分担執筆): ""Properties of III-V Quantum Wells and Superlattices"" Edited by P. Battacharya, IEEEMIS, 400 (1996)