本年度の研究では、室温形成シリコン/酸化セリウム整合ヘテロ界面の電気特性評価と電界効果を利用した高性能電子デバイス応用の検討を目的として行った。シリコン上への酸化物薄膜の成膜方法では、シリコン基板を水素で終端する清浄表面化処理後、成膜室内にセットし、基板加熱せずに酸化物ターゲットをレーザーアブレーション(はく離)して、基板に膜を堆積する。成膜中は、適当な酸素分圧で基板上に酸素ガスを吹き付ける。また、反射高速電子線回折(RHEED)のその場測定により、膜成長中の構造変化を追跡した。その後、シリコン/酸化セリウム整合ヘテロ界面を用いたMOS型(金属-酸化物-シリコン)電子デバイスを構築し、そのI-V、C-V特性やトランジスタ特性を調べた。 その結果、下記の研究成果を得ることができた。 (1)2段階成膜プロセスを経るレーザーMBE法により、従来考えられなかったような室温という低温でSi(111)基板上にCeO_2単結晶薄膜を作製することに成功した。2段階成膜は次のように行った。(1)始めに水素終端処理したSi(111)基板上に約5nmの極薄膜を超高真空中(5×10^<-9>Torr)で成膜する。(2)その後酸素ガスを導入して、5×10^<-5>Torrにし、続けてCeO_2を成膜する。これによりCeO_2膜のエピタキシャル成長が室温でも達成された。 (2)高分解能TEM格子像の観察から、SiO_xアモルファス層などの形成は見られず、完全に格子整合した界面であることがわかった。このように、超高真空中でのレーザーMBE成膜では、セラミックス薄膜の原子層制御のみならず、従来予想できなかったような低温成膜が可能となることがわかった。室温成長CeO_2/Si界面を利用したMOS構造(金属-酸化物-半導体)における電流-電圧特性を調べると、絶縁破壊電圧は1MV/cm以上を示し、電気的にも高品質な酸化物/Si界面が形成されていることがわかった。
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