不純物原子(ドーパント)を半導体中に2次元あるいは1次元的に規則的に配列することができれば、「ド-ピング量子ドット」の実現が期待される。本研究はこの第1歩として、ドーパント(ボロン)のSi表面への吸着による表面再構成過程を超高真空トンネル走査型顕微鏡(STM)により調べ、さらにはこの表面にSiをエピタキシャル成長させ、その構造の電気的特性を調べることを目的としている。平成8年度では、STMによるSi(111)7x7表面構造の観察、および電子線ビームにより単体ボロンを蒸発させ、昇温させたSi(111)7x7表面に吸着させ、その再構成過程をSTM観察により明らかにした。通常の清浄化プロセスによりクリアな7x7表面を安定して観測できた。次に800℃に昇温させたSi基板に単体ボロンを吸着させたときには、ステップあるいはテラス上に数10nmの島状クラスターが形成された。一方、1000℃の場合には、ステップ端から低いテラスの方向へステップに平行に再構成表面が形成され、900℃の場合にも同様な結果が得られた。なお、室温でボロンを蒸着後、高温アニールを行った場合にも900℃以上で再構成表面が観察された。これは、Si(111)7x7表面が1x1表面構造に変わり、冷却過程でボロン再構成表面が形成されることを示している。なお、ボロン再構成表面は√3x√3構造となることが知られているが、今回は明確な√3x√3構造よりむしろ、その欠陥構造の一種であるリング構造が多数観察された。
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