機能性有機材料の開発を目指し、本年度は、その基礎段階として、生体膜を模擬した人工生体膜の誘電的研究を理論的・実験的に行うための環境づくりと、工学的応用につなげるための基礎データの収集を行った。以下に具体的な実施結果を示す。 1.人工脂質二分子膜を黒膜法によって作製し、膜材料の成分比や氷相の濃度を変化させた場合の膜キャパシタンスや膜コンダクタンスの周波数特性を測定し、水-黒膜系の誘電緩和現象に関する実験的研究を行った。 2.上記実験システムを、GP-IBインターフェースを介してパソコンでコントロールし、電気的特性を自動測定できるシステムを構築した。今後、データ処理機能を付加させる予定である。 3.実験系の電気的等価回路を考え、水-黒膜系の誘電緩和現象に関する理論的研究を行った。様々なシミュレーションを行い、さらに実験結果との比較・検討により、相違点を明らかにし、お互いの相関を考察した。 4.人工脂質二分子膜の理論的・実験的研究により、水-黒膜系の誘電緩和現象が明らかになった。これらの研究結果は、工学的応用につなげるための重要な基礎データになると考えられる。 5.実験で使用した白金黒電極が、実験結果に大きな影響を与えることがわかり、電子顕微鏡や原子間力顕微鏡を用いて、電極表面の構造観察研究を行った。今後、膜そのものの微視的構造観察研究を行う予定である。 6.タンパクの組み込み等、分子レベルでの機能付加を実現できる膜作製方法としてLB膜法に着目し、LB膜作製の基礎段階として、表面圧-面積特性や累積比に関する基礎研究を行った。今後、LB膜法のよる人工生体膜の作製を検討していく予定である。
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