平成9年度までの研究実績をもとに、人工生体膜の理論的・実験的な誘電的研究を一層推進した。さらに、工学的応用として味覚センサーの開発に取り組んだ。また、機能性有機材料開発へのアプローチとして、人工生体膜と非常に関係が深く空気界面で層形成可能な液晶自己保持膜の層構造に関する研究を一層推進した。 1. 人工脂質二分子膜の誘電緩和特性と味覚センサーへの応用 (1) 人工脂質二分子膜を用いた水-黒膜系の誘電緩和現象について、膜材料や電極材料を変化させた場合の周波数特性を自動測定し、また理論解析を行い、人工生体膜の誘電緩和特性を理解することができた。 (2) 味覚センサーへのアプローチとして味覚物質に対する膜電位変化の測定を行うべく、微小電圧の増幅及びフィルタ回路の設計・製作を行い、ブルシン(苦味物質)に対する膜電位応答測定システムを構築した。これらの研究成果により、有用な機能を持つ味覚センサー実現の可能性を見出すことができた。 2. 液晶自己保持膜の層数や物性定数の決定と構造解析 (1) 透過偏光解析法による入射角-位相差実測特性と4×4マトリックス法による理論的なシミュレーション特性をフィッティングさせ、膜の層数、分子長や屈折率異方性等の重要な物性定数を決定することができた。 (2)温度-位相差特性を測定し、温度変化による層構造変化を観察することができた。実測特性とシミュレーション特性をフィッティングさせることにより、これまで明らかにされていなかった強誘電性液晶や反強誘電性液晶におけるサブフェーズの層構造に関する新規で有用な情報を得ることができた。
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