1個のnpnトランジスタと1個のキャパシタとを直列接続した基本素子を交流駆動したときに発生するカオスについて、トランジスタの動作原理に立脚したカオス生成機構の解析を行い、ローレンツ・プロットの曲線の解析的表現を得て、実測とよく合うことを明らかにした。この研究の端緒となったサイリスタによるカオス発生は、電流路制御型の負性抵抗という点で気体のグロー放電と共通性を有するので、上記およびサイリスタでの解析モデルを参照しながら、グロー放電に伴う発光におけるカオスの実験的観測の条件設定を行い、放電管と受光素子および分光器の配置を決定して予備実験を行った。 またカオスの様相の異同を視覚的に把握するために、時間波形のスペクトル分布が長時間の観測の間に示す挙動(各周波数成分の出現確率分布)を三次元表示するプログラムを開発し、シミュレーションおよび実測データの解析に適用して、倍周期状態からカオスに遷移する過程のダイナミックな視覚化を行った。
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