VLSI観測画像から回路ブロック間の配線や機能等の回路情報を得る、いわゆる"逆設計"考え方に基づく故障診断支援システムの構築を目的とした、VLSIチップの光学顕微鏡観測画像を用いた回路認識システムを提案した。VLSIは各種機能を持った回路ブロックから構成され、その機能に応じて異なった設計手法、例えば、フルカスタム設計、標準セル設計、Sea-of-Gate設計、メモリ設計等、を用いて設計されるのが通常である。このようなVLSIの故障診断支援システムでの回路認識には、設計手法に応じて構築された知識ベースを認識する回路ブロックに応じて切り替えることが効率的であると考えられる。まず、我々は、VLSI観測画像を回路ブロックに分割し、さらに回路ブロックの設計手法を自動的にフラクタル解析を用いて認識する手法を検討した。つぎに、標準セル設計の回路ブロックを対象とした知識ベースを、基本セルレイアウトとVLSIチップ光学顕微鏡観測画像から構築した。知識ベースは、セルライブラリ、ポリゴンライブラリ及びルールベースから構成されている。ポリゴンライブラリのデータは、長方形ブロックの集合として記述される。観測画像から抽出された配線パターンも、長方形ブロック集合として記述される。この長方形ブロックには、第1層Al配線と第2層Al配線を区別するために観測画像のエッジの明瞭度を示すエッジ強度情報が付加されている。標準セル設計のセル列領域で回路機能の推定が、配線チャネル領域でセル間の接続情報が抽出され、回路認識が行われる。この手法をCMOS LSIの光学顕微鏡観測画像に適用し、その有効性を示した。ここまでの対象は、2層Al配線で設計された標準セルが対象であった。これを多層Al配線の標準セル設計に適用すべく柔軟な知識処理を用いたアルゴリズムに拡張しつつある。
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