本研究では、運動中枢神経系からの信号伝達に障害を有している障害者に、新たに適応的な補助脳(人工運動中枢神経系)を組み込むという発想で、生体が本来有する運動制御系とは別に人工的に付加された補助脳を用いて生体制御を実現しようとするものである。平成8年度の当該研究では、動物実験計画を変更し、非侵襲にて直接人体への適用を試みた。その結果、以下のような成果を得ることができた。これは、当初予定していた成果以上の研究成果である。 1)リカレントニューラルネットワークと遺伝的アルゴリズムで構成される人工運動中枢神経系を拡充し、これにセンサー系感覚フィードバックを組み込むことによる補助脳系の開発した。また、本補助脳の適応能力を2次元・3次元空間でのシミュレーションにより確認した。 2)ロボット工学・制御工学の分野等で開拓されて来た各種の姿勢制御・歩行アルゴリズムの補助脳への導入した。さらに、新たに2種類のアプローチ(完全創発適応型、解析・創発融合型)を提案・開発し、両手法の性能をシミュレーションにより確認した。その結果、融合型手法に簡便さと実用性を見いだすことができた。 3)3次元生体シミュレータによる性能評価を行なった。筋肉特性を導入し、各骨格は伸筋・屈筋で構成した。18本の筋肉で構成した系においても、運動獲得が始まった。 4)64チャンネルでの人体の腕を用いた計測・FES実験(制御入力の決定と制御部位の探索)を行ない、新たな知見を得ることができた。 5)生体の筋骨格系のパラメータ同定手法を確立し、本補助脳適応時の支援環境を得ることが可能となった。従って、これまで死体から得られてきた外国人のパラメータを用いなくても、各被験者毎にパラメータをデータベース化することが可能となった。
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