樹木の根を大地センサとして役立たせるための基礎的研究として、根の接地抵抗を測定する方法を考案し、クワおよびクヌギの木に適用した。従来から用いられている接地抵抗計を樹木へ応用することを考えたが、測定リ-ド線の樹木への接続には電極を使用しなければならない。すると、被測定対象の等価回路は電極抵抗と接地抵抗の直列回路で表される。一般に、電極抵抗(数kΩ以上)は接地抵抗より1桁以上大きく、電極抵抗の測定誤差の中に接地抵抗が埋もれてしまい、接地抵抗を測定することはおよそ不可能である。この欠点を解決するためにマルチ電極法を考案した。電極には防錆上の観点からステンレス製の釘を用い、対象樹木の周囲に等間隔で10数本打ち込む。各電極の抵抗はすべて等しくなるようにア-ステスタの指示を読みながら調整する。次に電極を1本ずつ並列接続しながらア-ステスタの読みをプロットする。被測定系の合成抵抗は、電極の並列接続によって、次第に減少する。このカーブは並列電極本数nのマイナス1乗で下がる。ここで、nを無限大とすれば、漸近する値が求める接地抵抗である。実際にはnを無限大とすることはできないので、10数点のプロットから漸近する値を求める。これには最小2乗法によるカーブフィッティングを用いた。この過程から、接地抵抗と電極抵抗を分離して同時に求めることができる。以上の原理に基づくマルチ電極法を用いて、幹の太さが胴回りにして60〜80cmのクワ3本に対し接地抵抗を測定した結果、100〜400Ωの値が得られた。また、胴回りが、30〜80cmのクヌギ8本に対しては200〜1200Ωが得られた。また、これらの値は降雨によって変化することが認められ、接地抵抗自身が大地センサとしての情報をもち得ることが確認できた。
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