研究概要 |
研究計画2年度目は、まず前年度に考案した根の接地抵抗測定法を複素インピーダンスへ拡張した。被測定系における電圧と電流の位相差を求め、これとマルチ電極法による外挿法から、インピーダンスの実数部と虚数部を得た。さらに、測定周波数を10Hz〜1MHzまで変化させ、Cole-Coleプロットを求め、根の接地インピーダンスの周波数プロフィールを明らかにした。結果の考察から、根のインピーダンスは単純なRC回路ではなく、低周波(1kHz以下)においては電気化学でいうところの電極反応に基づくワールブルグインピーダンスの存在が顕著に認められた。これは生体の細胞膜における物質の拡散過程によるものと考えられた。これを基に、Randlesの等価回路を用いることによって樹木の根の電気的等価回路をモデル化することができ、大地センサとしての電気的基礎が固められた。次に、地電流を実験場(本学附属大室農場)に人為的に流し、樹木の幹電位の変化を観察した。天蚕用クヌギ林1列12本の両側に埋設した接地電極(電極間距離約30m)にDC200V、AC200Vppの電圧を印加した。流した電流はDC280mA,AC200mAである.クヌギ林の真ん中の4本の幹電位をレコーダによって同時記録した。幹電位は地面から高さ10cmのところに昨年度埋め込んだ電極から誘導した。インパルス応答、ステップ応答、パルス周波数掃引、正弦波周波数掃引(掃引周波数最低0.1mHz〜最高20kHz,三角波掃引)について実験を行った。各々の刺激持続時間はインパルス応答を除いて100秒とした。インパルス応答、ステップ応答の観測時間は刺激後100秒までとした。しかしながら、幹電位には刺激電流の重畳波以外特段の変化は認められなかった(感度:5mV以上)。この種の測定においては実験パラメータが極めて多いので、さらにいろいろな条件下で実験を行うことが生体センサとしての可能性を見出だす上で重要であると考えられた。
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