研究概要 |
本年度は,半導体レーザーフィードバック顕微鏡に関して研究を行った.この顕微鏡では、半導体レーザーにより試料を照明し、そこからの反射光を再び半導体レーザーに戻すことで、反射光の強度を検出する。すなわち、ひとつの半導体レーザーが光源と検出器との両方を兼ねている。また、半導体レーザーの射出口がピンホールとして機能するために、この顕微鏡は反射型共焦点顕微鏡となっており、光軸方向の分解能を有している。半導体レーザーフィードバック顕微鏡では、戻り光による誘導放出が起こるため、レーザーの発振状態は試料の反射率または表面形状に依存する。とくに半導体レーザーをしきい値電流以下で駆動した場合は、試料からの戻り光の強度が一定値以上あるときのみレーザー発振がおこる。戻り光の強弱は試料の凹凸に依存しているため、試料の凹凸でレーザー発振を制御することになり、試料の構造の光軸方向の深さを識別する能力が向上する。 実際に半導体レーザーフィードバック顕微鏡を試作した。光源には、半導体レーザー(波長830nm)を用いた。レーザー光を,対物レンズによって,試料に集光し,反射光を戻り光として,レーザーに再入射させた.戻り光によるpn接合間の電圧変化量は、差動増幅器を経たのち、コンピュータに取り込んだ。ステージは、ピエゾ素子によって三次元的に走査した。試料の位置に反射鏡を置き、その反射鏡を光軸方向に走査することで、光軸方向の応答を得た。その結果,注入電流を低下させると、得られる光軸方向の応答のピーク幅が減少し、深さ識別能が向上した。また、同時に、デフォーカス部分であるサイドローブの影響が除去された。今回の結果では、47.0mAで測定した光軸方向は、しきい値電流以上の63.0mAで測定した光軸方向の応答に比べ、ピークの半値幅で約1.5倍、ピークから零点までの幅で約4倍、深さ識別能が向上している。次に,ICパターンの観察をおこなった。その結果,フォーカス面上の構造がコントラストをもって観測された。また、フォーカス面が変わると観察像の中の明るく示される位置が変化し、光軸方向の分解能が得られた。また,半導体レーザーしきい値電流以下で駆動し観察することで,焦点面前後の像が消え,試料の深さをより細かく識別できることが分かった.
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