研究概要 |
正・逆・横ずれ断層を問わず、主断層が成長する過程で,その屈曲部に新たな断層面を生じて,周囲を断層で境されたレンズ状の二重三重からなるブロックの構造を一般にデュープレックスと呼ぶ.兵庫県南部地震においても,大規模には野島断層から横尾山・須磨断層に続く明石海峡下に見られる遷移して屈曲する断層部分,小規模には野島梨本地区に見られるほぼ直線的な断層セグメントのステッピング部などにおいてこの構造が出現している.これらとほぼ相似な形態は,人工的に生成された粘土供試体を用いて一軸圧縮試験をした際にも見られる. 本研究では、フィールドならぶに室内試験で供試体を一軸圧縮した際に生ずる横ずれのせん断帯の表面観察や薄片を用いた偏光顕微鏡による観察結果から、せん断帯は,大きな長さを直進できず,階段状のステップを踏みながら進展していくことを観察できた.また、雁行配列のせん断(エシュロン)部をつなぐ領域は隆起し,プレッシャーリッジと呼ばれるブリッジ構造が造られることがわかった. さらに、詳細な観察結果より、せん断帯がいくつかの細線群で構成されると考えた場合,せん断帯には特徴的な幾何パターンが見られる.せん断帯は,分岐や他の細線群への遷移などを無秩序に繰返しているように見えるが,複雑なデュープレックス構造においても,ミクロ(細線の分布),セミミクロ(細線群の分布)およびセミマクロ(主せん断帯と副せん断帯の分布)での幾何パターンは類似している.これは,同じ角度の細線は,ある距離のほぼ整数倍の間隔で発生していることに関係があると考えている.次年度は、破壊モードの異なるせん断帯の特徴やスケール効果について詳細なせん断帯の観察を行う予定である。
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