研究概要 |
本研究は,構造部材あるいは架構要素のみを対象に加力実験を行い,その他の部分については数学モデルを設定した地震応答解析を実施し,これらをコンピュータでオンラインに結ぶことにより建物全体の応答実験を進める手法である,サブストラクチャ・オンライン実験を対象に,その解析部分に用いる履歴特性に対して,ニューラルネットワークを用いた履歴推定手法の適用可能性を検討することを主目的としたものである。 本研究ではまず検討に用いるネットワークモデルとして,階層型ネットワークを設定し,バイリニア型復元力特性を対象に,履歴曲線の推定能力を検討した.入力ユニットには現在の変位,現在までの最小および最大変位,前ステップまでの最小および最大復元力、変位増分の6データを設定し,出力値すなわち推定すべきデータとして復元力を設定した.このネットワークに対して,(1)教師データと同一ループ上ではあるが推定ポイントが異なる場合の推定能力,(2)履歴面積が異なるループに対する推定能力,(3)学習時の最大許容誤差と推定能力の関係,(4)中間層ユニットの構成と推定能力の関係,(5)教師データ数と推定能力の関係,などについて検討した.その結果,履歴面積の異なるループを推定する能力は教師データの許容最大誤差と履歴ループ数に依存するが中間層ユニット数が推定結果に与える影響は小さいこと,推定すべき履歴ループの後半に生じるずれを修正し精度良くループを再現するためには相当数の教師データと学習回数が必要であり,許容誤差を1オーダー低減するためには学習回数,すなわち収束までに要する計算時間は数倍以上に増加することが明らかになった。
|