本研究の目的は、アトリウム内の複雑な昼光環境の動態を把握し、快適なアトリウムを構築するための昼光照明の設計指針を確立することである。平成8年度の研究実績は以下である。 (1)アトリウムの定義:現代アトリウムの定義は非常に曖昧である。本研究では、(1)昼光を取り込む空間、(2)大規模な吹き抜け空間、(3)建物の内部と外部、あるいは内部同士を結ぶ空間、(4)建物の内部と外部、あるいは内部同士の緩衝空間、(5)外部とは完全に遮断され得る内部空間、(6)人々の移行の空間、(7)建物全体の核となる空間の特徴を持ち合わせたものをアトリウムと定義した。 (2)アトリウム分類:1981年から1994年までに日本で建設され建築関係の雑誌の発表された事例より、研究対象とするアトリウム81件を抽出し、それらを採光方式と建築形式の点から分類した。その結果、天窓1面採光方式の中庭型のアトリウムが最も多かった。 (3)アトリウムの室形状の分析:研究対象のアトリウム81件を、アトリウムの高さ、床面積、容積、高さと平面の短辺との比、平面の長辺と短辺との比、縦横高さ比に関して分析した。その結果、高さ15〜16m、床面積300〜400m^2、容積5000〜6000^3のものが多かった。また、高さと短辺の比、長辺と短辺の比に関しては、ばらつきがあったが、縦横高さ比に関しては1:1:1、すなわち立方体に近い形状が多かった。 (4)模型実験による予備的検討:人工天空内で天空条件を変えて模型実験を行い、アトリウムの形態・採光面数などと昼光率との関係を検討した結果、採光部と太陽との位置関係による昼光率予測の可能性を得た。
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