本研究の最終的な目的は、アトリウム内の複雑な昼光環境の動態を把握し、快適なアトリウムの光環境を構築するための適切な設計指針を提示することである。まず、光環境の物理的側面から、アトリウムにおける昼光照明の設計指針を提案することを目標とする。平成9年度の研究実績は以下である。 (1)昼光照明計算プログラムの作成 アトリウム内の昼光率の分布を予測するため、照明計算のコンピュータ・プログラムを作成した。光源としての天空の輝度分布には平均天空を適用し、照明計算には光束伝達法を用いた。 (2)昼光率の予測計算 上記項目(1)の昼光照明計算プログラムで、アトリウムの空間形状(縦・横・高さの比)、アトリウム内部仕上げ面の反射率の構成を変え、床面中央と4壁面中央における昼光率を計算した。採光のための開口部は、アトリウム上部の全面1面のみで、4壁面は東西南北に向くと仮定した。 (3)模型による予備的実験の結果との比較 上記項目(2)の計算結果と、平成8年度に行った人工天空内における予備的な模型実験の結果とを比較検討した。これより、昼光率分布に関する計算結果と模型実験の結果は矛盾しないことを確認した。 (4)昼光率の予測式の作成 上記項目(2)の計算結果に基づいて回帰分析を行い、アトリウムの空間形状と内部仕上げ面の反射率の構成に関する昼光率の予測式を作成した。
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