本研究は、環境行動論における人間-環境関係に関するトランザクショナリズムの視点から、建築あるいは都市のデザイン行為の目的・内容・方法について、その意味・可能性あるいは問題点を、理論的ならびに事例的に考察し、新しい“環境デザイン観"探求の契機を開こうとするものである。具体的には、(1)人間-環境関係に関する環境決定論・相互作用論・トランザクショナリズムなど関連モデルを含む理論的検討を行い、(2)トランザクショナリズムの特質を把握し、(3)それに基づく“環境デザイン"の意味・目的・内容・方法について考察する。そのために、(イ)基礎的文献等による分析考察を行うとともに、(ロ)関連する事例の資料を収集し、(ハ)いわゆる設計者・居住者・管理者等関係者への詳細面接調査を実施し、(ニ)当該“環境デザイン"活動とそれによって得られた環境の多面的評価を試みる。 今年度は、(1)特徴的な環境デザイン事例のリストアップと関連資料収集を集めている。特徴的な環境デザインとは、デザインの過程・方法・関係者等に特徴のあるものを指す。例えば、非専門家による設計、いわゆる市民・住民・居住者参加による設計、多数の設計者の共同プロジェクト、極めて長期に渡る設計・建設による環境形成、深刻な紛争等を経た設計、などを想定している。 さらに、(2)試行的な調査として、独立住宅の場合を採り上げ、建築主3例・設計者2例ならびに工業化工法住宅供給者3例に対する個別面接ヒアリング調査を行い、住宅に関する意識構造とその形成過程を探っている。その結果から、関係者それぞれにおける“住宅像"とでも云うべきものの形成の様相、それに基づく様々な判断のなされ方、ならびにそれらの変容の要因等が窺われ、そうした事例の考察を通じてより一般的な構造の把握に至る方法を検討している。
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