研究概要 |
1.強震時には,建物の一部を壊して全体の崩壊を防ぐという耐震設計の考え方と,防火区画形成・避難経路確保の考え方の違い,耐震設計に対する一般の理解の違い等を整理した。 2.アンケートの結果および被害報告書等の分析から,建物のユーザー・オーナーあるいは意匠・設備設計者と構造技術者の耐震に対する考え方の違いを整理した。 3.建築に関する専門知識が豊かと考えられる30歳以上の建築学会会員1,000人を対象に,建物内の避難施設・防災設備の地震被害による危険性の認識と被害の許容程度に関するアンケートを実施した。 (1)避難障害や火災拡大要因となる被害が生じないようにする設計目標震度が,現在の耐震水準を震度階で1階級程度上回るものが多く,専門家が現行の水準を不十分とする意識が読みとれる。 (2)今後は設計目標震度を7にすべきという評価が最も多い被害項目が存在するものの,今後の設計目標震度の最頻階級が震度7とならないものもあるのは,専門家の工学的判断の結果が現れたものであろう。 建物のオーナーやユーザーと専門家の間のみならず,意匠・設備設計者と構造設計者という建築の専門家の間にさえ存在する,耐震性能に対する認識や期待内容のギャップを明確にすることは,耐震安全性を正しく議論するために不可欠である。また、ユーザー・オーナーの立場から求められる安全性のレベルを決定する要因を抽出する必要があると考える。
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