研究概要 |
1.研究の目的 都心部に建つ歴史的近代建築物についての保存計画立案に際して、欧米先進国での空中権や開発権移転(TDR)等の手法に学びつつ、わが国都市計画上での評価基準を確立し、保存保全手法の解明を目指すことが本研究の目的である。 2.研究方法 昨年の研究では、街区内及び街区外での移転手法に着目してその開発権移転の可能性のみを追求してきた。今年度は更に調査項目ごとのクロス集計から、開発権移転に対して、どの項目が関係してくるかを評価・判断してその移転手法をさらに詳しく検討した。評価判断に際しては、以下5点即ち、指定容積率,未利用容積率,未利用延べ床面積,街区敷地面積,街区未利用容積率に着目してその移転の可能性を考察した。 3.研究の展開と分析 対象建物の地区・街区状況,未利用容積状況,クロス集計分析等から移転の可能性について検討し、次の様な特徴を把握することができた。 (1)対象近代建築物の敷地面積に余裕がある時及びその建物が位置する街区敷地面積が大きければ、街区内での移転が可能である。 (2)街区内での未利用容積率が大きければ街区内での移転が可能である。 (3)(1)(2)以外の街区内移転が困難な場合街区外移転計画手法を検討しなければならない。 4.研究結果及び考察 未利用容積率と街区敷地面積との関係から街区敷地面積が10,000m^2前後以下では街区外での移転計画手法が望ましい事例がみられ、その建物の保存・保全に際しては敷地,地区及び街区特性に鑑みて移転手法を検討すべきである事を理解した。 5.今後の課題 本研究は、TDR制度の活用策の基礎手法を継続的に考察したもので、実現可能なものではない。今後地区計画制度の運用・改善を通して近代建築の保存と共に、地区特性に基づく、都市空間の有効な利用方法を更に模索していくことか課題であろう。
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