研究概要 |
容易軸の向きがサイトごと異なるランダム磁気異方性は、局在性の強い4f電子系アモルファス合金の磁気的振る舞いを支配しているとされている。一方、5f電子系では遍歴性が強まるため、4f系同様のアナロジーが可能か問題である。すでに、FreitasらによりU_<0.27>Fe_<0.73>アモルファス合金の抵抗極小が観測され、5f系でも弱いランダム磁気異方性が存在することが指摘されているが、一組成に限った実験にとどまっている。そこで、我々のグループは5f電子系アモルファス合金においてもランダム磁気異方性が現れる可能性を考え、U(Ge_<1-x>Si_x)_2(x=0,0.2,1)アモルファス合金をスパッタリング法により作製し、その磁性と伝導の関連を調べた。a-USi_2はUSi_<1.8>同様のキュリー・ワイス則であるのに対し、SiをGeで置換することにより低温で自発磁化が発現する。しかも、Ge濃度の増加に伴い磁化は大きな値となり、また転移点も上昇している。しかし、a-UGe_2の磁化および転移転はUGe_2に比べ小さな値となる。この一因には、原子配列の乱れにより磁気相互作用が弱められたことが考えられるが、ランダム磁気異方性により磁気配列が長周期秩序を失ったことが原因である可能性がある。さらに磁化曲線においてa-UGe_2およびa-U(Ge_<0.8>Si_<0.2>)_2の磁化は共に3T辺りまで急激な伸びを示しているが、それ以降は穏やかに増加し、23Tにおいても飽和をしない。しかも、ウラン原子当たりのモーメントは、UGe_2の容易軸の1.4μ_B/U.atomよりも小さい値である。一方、a-USi_2は低磁場領域での磁化の急激な増加は見られない。以上からU(Ge_<1-x>Si_x)_2(x=0,0.2,1)アモルファス合金においては、Geの添加に伴い自発磁化が発現をしていくが、結晶のようなコリニアーな磁気配列は達成されないと考えられる。
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