研究概要 |
今年度は以下のことを検討した。 1Cd_3TeO_6の伝導性および還元処理:固相反応法によりCd_3TeO_6を合成し、直流三端子法により室温から300℃までの温度範囲における電気抵抗の温度依存性を調べた。温度の上昇に従って抵抗が小さくなり(約50℃の温度変化で抵抗が一桁変わる)、活性化エネルギーは0.49eVである。酸素を欠損させる手法はCd_3TeO_6に電子をドープする方法の一つである。そこで、合成されたCd_3TeO_6を窒素雰囲気中で熱処理し、酸素欠損ができるかどうかを試みた。500℃以下では酸素はほとんど抜けないが、その温度以上で還元処理すると、Cd_3TeO_6の分解が始まることが分かった。この次は、少量のIn^<+3>(4d^<10>)を用いてCd^<+2>(4d^<10>)を置換することにより、Cd_3TeO_6の酸素欠損を導入せずに、電子をドープすることに挑戦する。 2Cd_3TeO_6の結晶構造の精密化:物質の電気物性と結晶構造は密切な関係がある。Cd_3TeO_6の電子伝導性を検討するにも結晶構造の情報を把握する必要がある。しかし、今までCd_3TeO_6について、詳細な結晶構造の解析や、原子座標の精密化などの報告がなかった。そこで、粉末X線回折パターンおよびRietveld解析により、ペロフスカイト単位胞の歪みを検討して詳細な結晶構造の解析を行うことにした。ペロフスカイト単位胞はmonoclinicの対称性を持ち、格子定数はa=c=3.9359Å,b=4.009Å,α=γ=90°,β=88.54°である。Rietveld解析を行うためには空間群を選択しなければならない。Bサイトイオンの1:1の秩序を考慮して格子ユニットを2倍するという通常のやり方ではImmmの空間群になるが、体心対称では絶対に現れない(III)ピークがあるための空間群を断念し、Pnnn,B2/m,P222など5種類の空間群についてシミレーションを行った。例えば、空間群P222のピーク位置は粉末X線回折パターンとほぼ一致するが、ピークの強度に大きな差が見られた(R_<wp>=27)。ICP組成分析の結果はCd:Te=3:1である。このような状況では、粉末X線解析のみで結晶構造を突き止めることが難しくなり、透過型電子顕微鏡の電子回折像があれば、研究が能率的に進む可能性がある。現在、数個結晶の重なった電子回折像が得られており、何とか一つの結晶の電子回折像が撮影できるように努力中である。
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