研究概要 |
今年度は以下のことを検討した。 1Cd_3TeO_6への電子ドープ 平成8年度には、Cd_3TeO_6を窒素雰囲気中で熱処理し、酸素欠損ができるかどうかを試みた。低い温度では酸素はほとんど抜けないが、高い温度ではCd_3TeO_6が分解する結果となっていた。平成9年度は少量のIn^<+3>(4d^<10>)によってCd^<2+>(4d^<10>)を置き換え、Cd_<3-x>In_xTeO_6(0.01≦x≦0.10)の合成を試みた。合成はCd_3TeO_6の合成と同様に空気中700℃8時間仮焼した後1050℃12時間本焼を行った。Inの置換量が少ない場合には、粉末X線回折パターン上に変化は見られないが、置換量が0.06以上になると、Cd_2Te_2O_7,CdTeO_3の不純物が観測された。これらの試料について組成分析を行ったところ、Inがほとんど含まず、CdとTeの比率はほぼ3:1であることが分かった。つまりこのような合成条件では CdとTeが蒸発或いは容器との反応により試料から欠落していた。これから、真空封入の手段で Cd_<3-x>In_xTeO_6の合成を再検討し、また蒸発しやすいIn^<3+>の代わりにLa^<3+>イオンを用いてCd_<3-x>La_xTeO_6の合成も試みる予定である。これらの合成実験を通して、酸素欠損を導入せずに電子をドープすることに挑戦する。 Cd_3TeO_6の結晶構造の精密化 物質の電気物性と結晶構造は密切な関係がある。Cd_3TeO_6の電子伝導性を検討するにも結晶構造の情報を把握する必要がある。平成8年度に、斜め方晶として幾つかの空間群を選択してRietveld解析を行ったが、うまく行かなかった(R_<wp>=27)。今年度は、まず予備研究としてCaとTeのorder lineが強く現れるCa_3TeO_6の結晶構造の精密化を行った。Ca_3TeO_6について詳細な結晶構造の解析の報告がなかったが、この物質の粉末X線パターンはすでに報告されていたCa_3ReO_6とかなりよく似ていたことから、Ca_3ReO_6と同じ空間群P2_l/nを用いてCa_3TeO_6の検討を行ってみた。R_<wp>=10.03,R _i=1.42,S=1.97の良い結果が得られた。従って、Cd_3TeO_6についても空間群P2_1/nを用いて検討したが、その結果は、R_<wp>=12.90,R_i=3.98,S=2.91であった。また、酸化物イオンサイトの熱振動パラメータの値は3を越えることやBサイトのCdとTeの最外殻電子数が同じであるため、CdとTeのorder lineが非常に弱く、占有率をランダムに設定してもほぼ同じR factorが得られることから、空間群についてもっと検討すべきかと思われる。今後、Cd_3TeO_6とCa_3TeO_6の固溶系のRietveld解析を行い、結晶構造の精密化をしながら、Cd_3TeO_6の結晶構造を決定する予定です。
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