本研究は、理論的に予言されている新フラーレン(SiC)_<60>の合成を試み、その存在が確認されれば、将来の新しい機能の発現に向けた物性研究を行うことを目的として行ったものである。以下に、本年度の研究で得られた結果を示す。 1.ケイ素(Si)とC_<60>の共蒸着を行い、生成物質の組成評価を行った。基板温度は100-500℃、フラックス比をSi/C_<60>=60-80、成膜速度を1-3.5Å/sとした。 2.可視光透過特性は、基本的にSiのものを反映するが、基板温度300-400℃で成膜したものは、吸収端が長波長側にテ-ルを示し、膜の色も赤身を帯び、Si-C結合の形成が示唆された。赤外吸収では、1050および900cm^<-1>付近にSi、C_<60>それぞれ単体には見られないピークが現れた。オージェ電子分光法による組成分析では、SiとCの混合状態になっていることがわかったが、Si-C結合の存在を直接確認するには至っていない。成膜温度が400℃以上では、C_<60>の脱離が示唆される。 本年度の研究の範囲内で、(SiC)_<60>の確認には至らなかったが、単にSiとC_<60>との混合物では説明できないような光学的特性が観測されたことより、より幅広い条件での成膜と、多様な構造評価を行うことで、(SiC)_<60>の合成へ向けた研究の展開が図られるものと考え、研究を継続する予定である。
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