研究概要 |
ホールバーニング効果を次世代高密度記録媒体へ応用するためには、固体マトリックスの不均一吸収帯幅の増大とホールの安定温度の上昇が重要な課題である。本研究ではPVD法により成膜した非晶質薄膜におけるホールバーニング効果を検討した。固体マトリックスとしてはこれまでにバルク材において室温ホールバーニング効果が報告されているホウ酸塩ガラスおよびケイ酸塩ガラスを、またド-ピングイオンとしてはSmおよびEuを選定した。薄膜作製法としてイオンビームスパッタ、電子ビーム蒸着、RFマグネトロンスパッタなどの方法を試みた。ターゲットとしてはホウ酸塩ガラスではB_2O_3、Nao,Sm_2O_3、またケイ酸塩ガラスではSiO_2、Al_2O_3、Eu_2O_3混合粉末の焼結体を用いた。 上記の成膜法を検討した結果、ホウ酸塩ガラスの薄膜化はその融点、および蒸気圧のために極めて困難であったが、ケイ酸塩ガラスについてはRFマグネトロンスパッタ法による成膜が可能であった。組成比SiO_2/Al_2O_3=3/1のケイ酸塩ガラスにEu_2O_3を2.2-6.2mol%ドープしたスパッタ膜に対して、組織および光学特性の評価を行った。薄膜の高分解能透過電顕観察より非晶質であることが確認された。いずれの組成の薄膜においても吸収端近傍の分光スペクトルには波長274nm付近に強い吸収ピークが観察された。この吸収はESCAによる解析からマトリックス中のSiO_2構造の欠陥に原因するものと推定された。しかしながら、Eu^<3+>イオンにおける電子遷移(f-d,f-f)に起因する吸収あるいは蛍光のピークはいずれのドープレベルの薄膜においても観察できなかった。薄膜試料の体積とドープイオンの光吸収強度との関係から適正なドープイオンを検討する必要がある。
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