研究概要 |
本研究は酸環境下で激しい劣化を示すアミン硬化エポキシ樹脂に着目し、その劣化をリサイクルに応用するシステムの開発を目的として行った。酸性水溶液中で劣化の激しいアミン硬化系のエポキシ樹脂を取りあげて、そのFRPおよび、樹脂板を作製していくつかの酸に浸せき試験を行った。ここで、使用した材料は、エポキシ主鎖としては一般的なビスフェノールA型の液状樹脂を用い、硬化剤には今までの知見で最も劣化の激しかったメンタンジアミン(MDA)とした。強化繊維についても一般的なE-ガラス繊維のマット及びクロスを使用した。 実験の結果、硫酸、燐酸水溶液中ではともに膨潤するとともに次第に表面が褐色に変色し、強化繊維が浮き出てくる。しかしながら、2mol/1,80℃の条件で、1000時間経過してもFRPの形状は保持している。比較で行った水酸化ナトリウム水溶液や過塩素酸でも劣化は観察されるが、強化繊維が白く見えるようになる程度であった。これらに対して、硝酸水溶液中では約50時間後から試験片表面に高粘性の腐食生成物が発生し、600時間程度で樹脂成分は全て分解されて、強化繊維のみが残留する。このため、本研究の目的であるリサイクル可能なFRPシステムの開発は硝酸中での劣化挙動を応用すると、少なくとも強化繊維を分離回収することが可能となる。 そこで、樹脂成分のマテリアルリサイクルを目指して、4mol/lの硝酸水溶液中における劣化挙動を検討したところ、水溶液中に溶出した成分は冷却すると結晶として析出する成分と溶解している成分とに分かれる。これらを分析したところ、結晶成分はピクリン酸、溶解している成分硬化前のエポキシ樹脂の骨格を残したもので、酸化、ニトロ化を受けた成分であることが明らかとなった。これよりこの溶出成分を用いることによってマテリアルリサイクルの可能性が示された。
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