本年度は、128゚回転Yカットニオブ酸リチウム強誘電体単結晶を用いる弾性表面波の効果との比較を行うため、単分域化した単結晶として、自発分極軸を結晶の表面に対して垂直な方向を持つz-カットニオブ酸リチウム強誘電体結晶を用い、結晶の片面に異相交互周期膜構造を作成し、共振を発生させた場合の触媒作用に及ぼすに効果について調べた。電子ビーム蒸着法を用い、それぞれ10nmの膜厚でAlとCu膜が互いに10層から成る200nmの膜厚の交互膜を作成し、その人工格子間隔をもつ周期交互性を、深さ方向のオージェ電子分光分析および低角度X線回折パターン解析により確認した。この交互膜は373Kの加熱でも安定に存在するが、室温での1W共振により、人工格子間隔が1〜0.5%小さくなることを見出した。この変化は超格子間隔が4.5%増加する弾性表面波の効果と逆となった。レーザードップラー法により、格子変位の大きさを調べ、厚み振動により、3W印加で60nmにも達する垂直方向の不規則なパターンを持つ定在波が生じることを示した。交互膜を単純化した3成分系(20nm Ag/100nm Pd/100nm AI)および(2nm Ag/100nm Pd/100nm Al)上でのエタノール酸化反応において、373Kでアセトアルデヒド生成活性は、1Wでの共振により、前者の触媒では3.6倍、後者では5.7倍と大きく増加することを示し、共振による表面に垂直成分の格子変位が交互膜の触媒作用に効果を与えることを明らかにした。また、単一層ではあるが、酸化物系についても調べ、弾性表面波が酸素に対するNiOの吸着および脱離作用を促進する効果を持つことを見出した。以上の結果に基づき、本方法が制御機能を持つ触媒系の確立に有用であることを結論した。
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