周期的断続磁場を用いて液相中の磁性粒子をその磁気特性に基づいてクロマトグラフィー的分離を行う磁気クロマトグラィーの開発の一環として、透磁率の高い鋼性ビーズを充填した分離カラムを用いた磁気クロマトグラフィーを以前に実現した。その後、充填材を用いずにテフロンチューブを高勾配磁場に置くオープンカラム型カラムによって、より高性能の磁気クロマトグラフィーを実現し、酸化鉄磁性粒子であるヘマタイト粒子とマグネタイト粒子の分離に成功した。本研究では、強力な高勾配磁場を発生させる磁場発生装置および磁場制御システムを製作し、これまでの小規模装置との比較を行い、スケールアップの可否を検討した。 電磁コイルに供給する直流電圧を最高10Aまで断続できる磁場制御装置を製作し、これまで得られた2000 Gauseの倍以上にあたる4500 Gaussの磁場強度を断続させるシステムを実現した。本実験装置により、小規模装置で問題となっていた発熱による装置の温度上昇はほとんど避けられ、磁場強度が大きくなるにつれて磁性粒子(マグネタイト)の保持時間がさらに大きくなることを確認した。また、より小さな磁性粒子の磁気クロマトグラフィーが可能であることも示唆された。しかしながら、電流を遮断し、磁場を完全に開放するまでに0.3秒を要し、これまでの小規模磁場発生装置が0.1秒以内に断続制御できる場合と比べ、短い周期での制御は難しいことが確認された。小規模実験装置の場合と同様に、マグネタイトに対する保持時間は、磁場の強度、磁場の印加率(磁場印加時間/開放時間)、移動相(水)の流速によって変化することが確認され、最適条件の下では、ヘマタイト粒子とマグネタイト粒子の混合試料が本システムでほぼ分離されることが確認され、今後のシステムの更なるスケールアップが期待された。
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