欠陥濃度の異なるCuOやCuO相の熱力学的安定性の異なるCuOセラミックスを用いてCuO/ZnOヘテロ接触を作製し、COガス選択性機能発現において陽イオン欠陥濃度やCuO相の熱力学的安定性が与える影響について考察した。p型半導体触媒のCO酸化活性と深い関連があるCuOのNativeな欠陥(陽イオン欠陥)濃度とCOガス選択的検知特性との関連につき検討を行なった。CuOの陽イオン欠陥(V_<Cu>′′)濃度は焼成温度を変えた上で高温での急冷操作を行うことで減少させることができることをTGと導電率測定により確かめた。しかしながら、COガス選択性、CO2検知特性とCuOの陽イオン欠陥濃度の明確な関連性は見出されなかった。CuO/ZuOヘテロ接触におけるCO_2感度およびCO選択性はCuOを除冷することで消失するが、その際格子の歪みが増大し陽イオン欠陥は減少した上、熱力学的安定性が低下する。酸化物触媒において触媒が熱力学的に安定である場合は酸化反応における律速過程が還元側(Vo+1/20_2→0_<ads> or0_o^x)にあり、熱力学的に安定なCuO表面上では吸着ガス分子が迅速に消費されないためにZuO上の吸着酸素とCuO上の吸着COとの反応が容易となり、CO選択性に寄与するというモデルが考えられる。この仮説は別の系でのヘテロ接触ガスセンサー(YBa_2Cu_3O_<7-δ>/ZnO系)のCOガス感度特性がδの値に依存するという事実からも指示される。δが大きいYBa_2Cu_3O_<7-δ>試料は還元に対して安定であり、CO酸化反応においても反応が表面吸着酸素と吸着CO間で進行することを反映し、YBa_2Cu_3O_<7-δ>とZnOとのヘテロ接触のCO選択性がYBa_2Cu_3O_<7-δ>の熱力学的安定性が大きく関わっていることが確かめられた。また高温から急冷させ、陽イオン欠陥濃度の少ないCuOを用いたCuO/ZnOヘテロ接触において、印加電圧によってCOガス感度とH_2ガス感度の大小関係が入れ替わる、いわゆるTurning of Selectivityが観測された。
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