水・油・界面活性剤から成る系において、油水界面張力を経時的に測定した結果、急激な界面張力の増加と緩やかな減少から成る自発的なリズムが数十分間繰り返され、その差はおよそ10mN/m程度になることが分かった。また、水相中を自由に動き回る油滴について、油滴の形状の変化と運動性の関係を測定した結果、静止している油滴が動き出す際、形が大きく歪むと加速度が生じることが明らかとなった。これまでの研究によって、油水界面張力の急激な増加によって接触角の反転が引き起こされ、その結果界面張力間のバランスが崩れて運動が起こることが側面方向からの観察で示されている。今回の測定結果は、上方からの観察によって、この機構が裏付けられたことを示すものである。さらに、この界面運動は化学種の濃度非平衡条件下で起こるものである。従って、外部から何らかのエネルギーを注入することによって運動は継続する。ここでは化学種の濃度非平衡性を上げることに着目し、運動の終了した(すなわち平衡に近い状態)油滴中に固体ヨウ素などの化学種を添加することで、系の非平衡度を再び上げることを試みたところ、運動が再び起こることを見出した。ヨウ素は界面活性剤と複合体を形成して油相へ移行することがほぼ明らかとなっている。ヨウ素の添加によって、油水界面に存在する界面活性剤が油相に移行し、張力振動が再開されたものと考えられる。 BZ反応(化学的振動反応)系においては、これまでは気水界面での張力変化を測定していた。しかしながら、この系に油相を加えて油水界面とすることで、得られる界面張力振動の振幅が気水界面での振幅と比較すると50%程度大きくなることが分かった。これは、張力変化を引き起こす原因となる金属錯体の水相表面への配向性に起因するものと考えられる。
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