窒素上に置換基を有するN-アリルトリクロロアセトアミドを、一価の銅塩と2座配位しうるアミンからなる触媒で処理すると、室温以下の温和な条件で炭素-塩素結合の解裂と分子内の炭素-炭素2重結合への付加反応がおこり、対応するα、α、γ-トリクロロラクタムが生成する。この反応をより効率的に進行させるとともに、不斉炭素の選択的な構築を可能にすることを目的に、反応条件の検討をおこなった。反応に与える主因子として、反応基質の構造、2座配位アミン類の種類、および、溶媒効果に着目し、系統的な研究をおこなったところ、N-アリルトリクロロアセトアミドの窒素上の置換基の導入と、その種類が反応の効率に大きな影響を与えること(アルキル基よりも電子吸引性置換基のほうが有利である)、2座配位アミン類としては、窒素上に水素原紙をもたないことが重要であること、および、溶媒としてはジクロロメタンのような含塩素溶媒、テトラヒドロフランのような含酸素溶媒が適していることが明らかとなった。このうち、不斉反応場の構築のためには、銅塩に配位するアミン類を不斉にすることが考えられる。予備実験として、スパルテインやpymoxのような既知のアミン系不斉配位子が有効であることを証明したが、3座配位子であるpyboxでは反応が進行しなかった。今後、有機溶媒中での不斉誘導の可能性を検討するとともに、相乗的な場の効果を期待してミセル系などの特殊な場を利用することを検討する予定である。
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