研究概要 |
主にメタクリル酸のラジカル重合の立体規制を目的として、高分子の鋳型としてキトサン、セルロースを、低分子の鋳型として1,2-ジルミノシクロヘキサンを用いて重合反応を行い、生成物の構造について検討した。キトサンあるいはセルロース存在下での重合は、固体状態の鋳型高分子にモノマーを吸着させ紫外光照射での開始により行ったが、生成物の立体構造には鋳型の影響は見られなかった。1,2-ジアミノシクロヘキサン存在下での重合は溶液中、α,α′-アゾビスイソブチロニトリルを開始剤として60℃で行った。この場合、鋳型分子の存在によって生成ポリマーの分子量、分子量分布が増加し、立体構造についてはシンジオタクチシチ-が減少し、イソタクチシチ-が増加する傾向が見られた。重合溶媒としてはメタノールよりもテトラヒドロフランあるいはクロロホルムが立体制御により有効であり、最適化された条件下では三連子イソタクチシチ->18%のポリマーが得られた(鋳型無しでの対照実験では8%程度)。これはメタクリル酸のラジカル重合についてはこれまでで.最も高い値である。但し、1,2-ジアミノシクロヘキサンの不斉性(1R,2R)-,(1R,2S)-)の効果はほとんど見られなかった。 次に、鋳型制御の機構について知見を得るため、メタクリル酸と1,2-ジアミノシクロヘキサンの相互作用の様式と強さについて調べた。赤外分光法により、モノマーと鋳型分子は水素結合とイオン性結合の両方で相互作用していることが明らかになり、核磁気共鳴法による分析から、錯体形成の化学量論比は[メタクリル酸]/[1,2-ジアミノシクロヘキサン]=3:2、平衡定数は270M^<-1>(60℃、CDCI_3中)と算出された。
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