ビニルモノマーのラジカル重合の立体規制を目的として、まず、粘土(モンモリロナイト、サポナイト)と2-および4-ビニルピリジンの塩酸塩の錯体を形成させ、粘土の層間での重合を試みた。モンモリロナイト、サポナイトいずれを用いた場合にもモノマーの塩酸塩は効率よく粘土中に取り込まれた。錯体に紫外線照射して重合を試みたところ、2-5量体程度のオリゴマーが主に生成し高分子量の生成物は得られなかった。次に粘土に換えて、臭化マグネシウム、臭化リチウム、光学活性なメントキシマグネシウムブロミド、メントキシリチウムの存在下での2-および4-ビニルピリジンおよびメタクリル酸2-ピリジルメチルの重合について検討した。2-ビニルピリジンの重合の立体化学には金属塩の影響はほとんど見られなかったが、4-ビニルピリジンの場合には金属塩の存在により生成ポリマーのイソタクチック含量が増加する傾向が明確に見られた。これはモノマーおよび成長種のピリジル基に金属塩が配位した結果、モノマーおよび成長種が見掛け上嵩高くなったためと考えられる。ただし、光学活性錯体を用いても有意な不斉誘起は確認されなかった。メタクリル酸2-ピリジルメチルの重合でもリチウム塩、マグネシウム塩との錯体形成による重合の立体化学への影響が見られ、金属塩の存在によりイソタクチック選択性が向上し、シンジオタクチック選択性が低下する現象が観測された。
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