研究概要 |
カキ数品種の花粉直径の分布を調査したところ,禅寺丸において巨大花粉の発生頻度が最も高い(約5%)ことが明らかになった.そこで,禅寺丸の巨大花粉と通常花粉をナイロンメッシュ(孔径62μm)を用いて分別し,フローサイトメーターによってそれぞれの花粉の核のDNA量を測定したところ,巨大花粉の核のDNA量が通常花粉の2倍であることが明らかになり,巨大花粉が非還元花粉であることが確認された.続いて,分別した禅寺丸の通常花粉及び非還元の巨大花粉を6倍体品種である次郎に交配した.交配約70日後の果実中の種子を調査したところ,通常花粉交配区の種子はほとんどが長さ15mm前後であり,その中には肉眼で確認できる大きさに発達した胚がみられる完全種子であったのに対し,非還元花粉交配区の種子の大部分は,長さ7mm前後であり,実体顕微鏡下でかろうじて確認できる程度の退化の段階にある胚を含んだ不完全種子がほとんどであった.これらの不完全種子中の未熟胚を無菌的に取り出し,胚の救助培養を行ったところ,植え付けた胚の数%のものが発芽した.フローサイトメトリーにより,これら発芽個体の核のDNA量は通常の6倍体のカキ品種の核のDNA量の1.5倍であることが示され,これらが9倍体であるものと考えられた.引き続いて9倍体シュートに発根処理をし,得られた根端の分裂細胞の染色体数を顕微鏡で観察したところ,いずれも2n=135の9倍体であることが確かめられた.これら9倍体個体を鉢上げ・順化し,温室で育成したところ,対照の6倍体個体とかわらず旺盛に生育した.
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