従来森林構造と微気象環境については、個別の分野に分かれて研究されることが多く、本来相互依存関係を持つ林内外の微気象と森林構造について一体となった研究が新たに必要であると考える。さらに充分な観測に基づく解析が必要であるとともに、それを数値化し将来的な予測を可能とすることは、新たなステップであり、重要な課題である。 そこで本研究では、森林内外に形成される特有の気象環境と森林の樹種、密度、樹冠構造等の関係を明らかにし、これを数値シミュレーションにより再現し、さらに樹木の生長にともなう林分構造と微気象環境の相互作用を明らかすることを目的とした。 2年間の調査・研究によって林内外の微気象環境の詳細や、森林の樹幹構造の特徴に関する多くの知見を得ることができた。特に従来の森林における熱収支では無視されてきた樹冠内貯熱量については、その量的な評価、森林の構造等による違いなどが定量化された。樹冠内貯熱量は特定の気象条件下ではあるが、純放射量の50%を超える場合もあり、無視できないものであることが明らかになった。さらに樹種等の違いではなく、樹冠層の高さが大きく支配することが明らかになった。 また樹木の吸水特性や土壌水分が気孔開閉に与える影響に関しても従来にない知見を得ることができた。数値シミュレーションに関しては、現在さらに研究を進めており、これらもとりまとめ次第、順次公表の予定である。
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