本研究の目的は、航空写真の色情報から森林の活性度を読みとる手法を確立し、森林を管理方針別にゾーニングすることである。研究は平成8年度および9年度の2カ年にわたって、バルーンによる航空写真の色濃度の補正、補正された色指標に基づく森林現況の評価、および森林管理への応用に関する調査、試験を計画している。平成8年度は1.バルーン表面の色濃度分布の評価方法に関する検討、2.GIS情報に基づく既存固定標準地の評価、3.既存固定標準地の類型化と森林管理方針の決定、の各種の試験を行った。 1では様々な日射条件下において試験を行う予定であったが、第一回目の試験の際にバルーンが破裂し、追加試験ができなかった。第一回目の写真のみを用いた分析では、ピクセル単位の評価ではバルーン表面の色ムラと思われるノイズにより、日射環境による色濃度分布が正確に抽出されなかった。そこでバルーン表面をいくつかのゾーンに区切り、その区域内のピクセルの平均値で評価したところ、ある程度妥当な色濃度分布を得ることができた。今回はこのゾーニングに関する基準を特に設けなかったが、次年度に立体角に基づいたバルーン表面のゾーニング手法を一般化する。2では、固定標準地の位置を現地測量により計測、GISを用いて固定標準地の色濃度およびDEMを採取し、毎木調査結果と比較した。なお色濃度は、影や土の部分を除去するプログラムを作成、閾値レベルを検討した上で抽出、統計処理した。その結果、各標準地上の色濃度レベルは、特に斜面方位の太陽からの偏差角に対して相関が認められ(r=0.89)、また同一斜面においては地位と相関も認められた。すなわち、斜面方位別色濃度補正による全域的な林地生産力評価の可能性が示唆された。3については、固定標準地を林種別に地位、林道到達距離、樹齢、材質それぞれをパラメータとして10種余りにグループ化し、グループごとに今後の管理計画を策定した。 これらの結果を基に次年度は、4.航空写真の色調の規準化、5.輝度補正式の導出、6.森林管理計画への応用手順、についての研究を行う予定である。
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