本研究の目的は、雌性生殖をする3倍性(3n)フナと通常の有性生殖をする2nフナの卵における遺伝子発現を比較し、解析し、雌性生殖機構を解明することにある。 3nフナと2nフナの各々の卵からmRNAを調整し、cDNAを合成した。当初は申請時の計画通り、サブトラクション法により特異的なmRNAを選別する予備的実験を実施したが、種々検討した結果、ディファレンシャルディスプレイ法で行った。即ち、各卵のcDNAを鋳型として数種類の任意のプライマーとアンカープライマーを用いてPCRを行い、電気泳動にて分離後、2n卵および3n卵各々に特異的またはより多く発現していると思われる断片(〜300bp)を数十、回収した。現在これらをクローニングすると共に、特異性の確実な断片の絞り込みに努めている。今後、一次構造の決定やノーザンブロット解析を行い、卵細胞特異性や生殖機構との関連を調べる予定である。 さらに、雌性生殖機構解明には、雌性発生の起源などフナの分子系統学的解析も重要である。そこで、上記と並行して、新たに発見したフナ種に特異的な反復配列(269bp)や5s-rDNAを含む反復配列(209bp)などの反復DNAを利用して解析を進めている。また、この目的には、ミトコンドリアゲノム(mtDNA)の変異も有用な指標となるので、2n及び3n個体のmtDNAをクローン化し、現時点で、3nフナmtDNAの内、D-ループを含む、約65%について一次構造を決定した。
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