研究概要 |
雌性生殖をする3倍性(3n)と通常の有性生殖をする2倍体(2n)フナの各卵巣における遺伝子発現をッディファレンシャルディスプレイ法により比較した。各卵巣から作製したcDNAを鋳型として18種類の任意プライマーと3種類のアンカープライマーの組合せでPCRを行い、ゲル電気泳動分離後、各卵巣に特徴的に発現している29ヶ所の断片を回収し、クローニングした。各断片あたりの複数のクローンの一次構造を決定して各卵巣に特異性高く発現していると思われる数個の分子を見つけた。DDBJデータベースとの相同性検索の結果、一部は既報の蛋白と相同であった。今後、これらの分子の発現様式を調べていく予定である。雌性生殖機構の解明には、このような遺伝子発現レベルでの解析に加えて、雌性発生の起源などに関する分子進化学的解析も必要である。その指標候補として既に発見しているゲノムDNA中の3種類の反復DNA配列について、その特徴付けを行なった。1つは、雌性生殖3nを含む多倍数性フナ特異的反復配列(137塩基対)であり、2つ目はフナ属(種)に共通してみられる反復配列(269塩基対)であった。3つ目は、5SrDNAを含む反復配列であり、サザン解析によりゲノム中での存在形態を、そしてin situハイブリダイゼーションにより染色体上の位置を明らかにした。また、ミトコンドリアゲノム(mtDNA)も分子進化学的解析の指標として有用であるので、研究室内で雌性発生させた3nフナ(AZ3系統)のmtDNAのサブクローニングを行ない、その全塩基配列(16,578塩基対)を決定した。既知のコイmtDNA配列と比較すると、蛋白、rDNAとtRNAコード領域では非常に相同性が高く、D-loop領域では適度な相違(約86%相同性)があることがわかった。現在、各種フナについて上記反復配列とmtDNA配列の変異の程度を調べている。
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