研究計画書において述べた各項目ついて研究を進めた結果、以下のような成果が得られた。 1.ドジョウ養殖が水田生物多様性に及ぼす影響評価 島根県三刀屋町、熊本県人吉市のドジョウ養殖水田(不耕起農法を含む)において、水生昆虫相の定量的なサンプリングを行い種同定を進めた。対照区とした周辺水田に比べ、大形水生昆虫類の密度が高く、その中にはとくにタガメLethocerus deyrollei、コガタノゲンゴロウCybister japonicusといった絶滅危惧種や希少種の成虫・幼虫を採集することができ繁殖が確認できた。またドジョウにとっての、これら希少種の餌資源としての重要性についての検討を進めた。まずこれら希少な肉食性昆虫種の幼虫飼育と羽化については人工気象器によって目度がついた。今後ドジョウを給餌した場合の成長、捕獲成功度などについて、発育と捕獲の行動学の点から調べて行きたいと考えている。またこれら希少昆虫にとって、ドジョウが不可欠な餌資源なのかどうか、他にどのような餌資源があるのかについて更に深く追求する必要があると思われた。 2.ドジョウ導入の水稲作システムへの影響評価 ドジョウを水田に養殖導入した場合の水稲の生育については、ポット試験を行った。ドジョウを一匹入れたポットと入れない対照区とでは、水稲の初期生育においてやや草丈と葉色の低下が認められた。しかし、慣行の肥培管理をし無農薬の栽培水田に、1m×1mのメソコズムをつくり、ドジョウを放飼したところ、水稲の生育や収量は無放飼に比べ変わらなかった。更なる追試を、雑草発生と窒素循環への影響評価のために、附属農場に赴任したのを機会に圃場実験を今後進めていきたい。
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