初年度は、とくにドジョウを養殖している農家の水田で、タガメ、ゲンゴロウ、コガタノゲンゴロウといった環境庁指定や県指定のレッドデータ種になっている水生昆虫の生息が島根県下などにおいて確認できた。2年度はさらにこれらの調査を継続、広域化、詳細化するとともに、ドジョウの水田生態系における諸機能を検討するために、野外・室内の実験的な取り組みを開始し、以下のような成果を得た。 1.ドジョウ養殖農家水田および周辺の水田(有機無農薬田を含む)、ため池におけるより綿密な調査を行い、ゲンゴロウ個体群の生息地利用の時空間的動態をほぼ把握できた。ゲンゴロウは、春と秋には、ドジョウ養殖田やため池といった恒常的水域に、夏は一次的水域にて産卵、幼虫期を過ごす。とくにドジョウ養殖田では夏季に幼虫の生存も確認でき、水田とため池の両方の生息地環境としての特徴を持ち合わせている可能性が示唆された。 2.岡山県・兵庫県の中山間水田地帯において、新たに絶滅の危機に瀕しているタガメ個体群の高密度生息地を探し当てた。タガメの場合でも1.で述べたゲンゴロウ同様に夏季に水田を繁殖に利用し、春と秋はタメ池や水路で発見することが多かった。この点については、マ-キングによる行動追跡なのどにより、詳細な調査を行う。そこでは多様な両生類相の存在とともに、ドジョウ個体群の高密度の生息が確認できた。また新規導入したタガメ飼育システムの運用に成功し、飼育実験に目度がついた。 愛媛県北条市にある附属農場に、水田を転化させたドジョウ養殖池20aを造成し、水生昆虫相を調べたところ、周囲の無農薬実験田に比べて、豊富な水生昆虫相が確認できた。とくに1995年度から進めてきた調査では、これまで水田で採集できなかったシマゲンゴロウ、ヒメゲンゴロウ、クロズマメゲンゴロウ、の生息が、新規造成したドジョウ養殖水田で採集できた。
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